音楽の3要素
オーケストラの練習などをする際に気になることがある。
オーケストラが演奏し、指導者がその都度指摘を行うが、その指摘に関する話である。
練習でよく見られる指摘は、
・ここを縦を揃えて
・ここの音量もっと大きく
・ここの音程を揃えて
・このフレーズをどう歌うか
・このハーモニーをきれいに
・この和声進行を意識して
などがあるが、特に自主的な練習になればなるほど、リズムや音量の指摘が多くなる。
以前芥川也寸志の書いた音楽理論の本に、音楽の3要素についての記載があった。音楽には律動、旋律、和声という3要素があり、前者に行くにつれ原始的なものである、というものである。民族的な儀式などではリズムと音量の要素の強い律動が音楽の主な部分であり、文化が発展すると旋律、和声的な要素が音楽に増えてくる、また人間が成長するにつれて獲得するのもこの順である、ということである。
つまり、音楽的教育をプロに比べて十分に受けていないアマチュアが自主練習を行うと、原始的な要素である律動の方が自然と気になってそうした指摘が多くなるのは納得がいく。旋律、和声といくにつれ、指摘が起きにくいという現象に陥ってしまう。
そうした点を踏まえて、アマチュアにおいては、旋律に関する指摘、例えばフレーズ感や歌い方など、また和声に関する指摘、和声のとり方や和声進行、ならびに和声進行に伴う音楽の流れなどを、努めて行っていくことが必要であると思われる。
実際に、ミクロ的に重箱の隅をひとつひとつつつくように縦を揃えたり音量を大きく小さくすることは、音楽的な演奏になるかというとそうではなく、必然性のないままになぜか揃っているという気持ち悪い演奏になることが多い。それよりも、全体のフレーズや和声進行を共有し揃えることで、音量の大小や縦のラインというのは自然と揃ってくる、しかも音楽的に整合性がある。重箱を、つつくのではなく大きな流れで見るマクロ的な視点。そこで揃わない場合は、細かいとこを取り出して練習するのはもちろん必要だが、細かいところからつついていくのは何か違う。
これはやみくもに細かいところを突くのではなく構造化して全体を見てから細かいところを決めるというロジカルシンキングにもつながる話かもしれない。
とにかくまあプロとアマの埋まらない溝というものはあるものの、アマチュアも自分たちの陥りやすいこうした点を自覚しつつ、努力して音楽をより良くしていく必要があるということです。
そんなことをふと思った、そんな週末。